「1坪の奇跡」から学ぶマーケティング
「1坪の奇跡」から学ぶマーケティング
ワクワクの仕掛人、岩井洋美です。
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或る時から、風が見えはじめた。
或る時から、澄んだ炭の、炎の力強さをつかんだ。
或る時から、小豆の、紫の一瞬の輝きの声が聞こえてきた。
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「1坪の奇跡」
40年以上行列がとぎれない吉祥寺「小ざさ」味と仕事(ダイヤモンド社)
本を開くと最初にこの一文が目に飛び込んできます。
著者は今年86歳になる「小ざさ」社長の稲垣篤子さん。
冒頭の境地に至るまでの過程が語られています。
「小ざさ」は吉祥寺にある小さな和菓子屋さんです。
売っているのは最中と羊羹だけといたってシンプル。
特にこの羊羹は早朝から並ばないと買えないので
「幻の羊羹」として有名です。
最中は何度も食べたことがありますし、
幻の羊羹も1度だけ食べたことがあります。
もちろんおいしいです!
でも、知っていたのは商品のことだけで、
ビジネスとしての「小ざさ」を知りませんでした。
実店舗はこの吉祥寺にある1坪のお店だけで
商品は黒・白二種類の餡がある最中と
1日150本限定の羊羹の2種類。
このシンプルなモデルで年商3億円です。
1平方メートルあたりで換算すると
アップルストアの20倍にもなるそう。
なんか…スゴイ!
「1坪で年商3億円」に注目しがちですが、
特筆するべきはこの年商ではありません。
稲垣篤子さんの商品に対する思いや
会社としての「小ざさ」の姿勢、あり方です。
例えば、この幻の羊羹。
熱伝導率の良い銅鍋を使って作るそうですが
それは焦げやすいということでもあります。
「焦げる寸前で焦がさない」が美味しさのコツ
と本には書いてあるので、かなり難しいことなのだとわかります。
小豆の味と風味を最大限に活かすためには
この鍋の中で動かすヘラに鍵があって
それは、「半紙1枚分の厚さを残す」こと。
「ヘラを鍋底につけない」と言ってしまえば簡単ですが、
鍋底からの距離が半紙1枚分を保って
2時間弱練り続けるんです…驚きです。
うまくやろうと思ってもできないし、
小手先で押すだけでも半紙1枚分にはならない。
五感すべてを働かせる必要があるそう。
こういうのを職人の神業というのかもしれませんが、
「その感覚」を体得するために
鍋に水をはってヘラがどう動いているのかを見ながら
何度も繰り返し練習したそうです。
これは本の中で紹介されていることのごく一部。
お客様に喜んでいただく商品を作って届けることへの
頑ななまでのこだわりが山盛り詰まっています。
「それが当たり前でしょ」ってところに胸を打たれます。
40年間行列が途切れない小さなお店は
ただ最中や羊羹が美味しいからだけではありません。
商品を売るための方法や仕組みよりも
もっと大切にしなくてはいけないことがあると教えてくれます。
「当たり前のことを当たり前にやる」
実はこれ、できそうでできません。
簡単そうでいて、やり続けるのは簡単ではありません。
押しつけがましいわけではなく、
この稲垣篤子さんの人生そのものが教えてくれます。
マーケティングの指南書を読んでノウハウを学ぶよりも先に
この本を読むことをお勧めしたいです。
「小ざさ」の味と仕事への思いを知って
猛烈に最中が食べたくなった私。
久しぶりに吉祥寺に行ったので、買いに行きました。
それなのに…定休日とは(泣)
★コアコンセプト・マーケティングの詳細は「こちら」をご覧下さい。
Tag: 商品に対する思い 会社の姿勢 小ざさ マーケティング